自然災害は飢餓をまねく大きな要因です。災害が発生すると、経済的にも物理的にも、食糧を手に入れることが難しくなります。食糧の安定供給にも打撃を与え、人々の栄養状態も悪影響を受けます。

災害リスク、貧困と食糧不足

災害による損失は、貧しい家庭やコミュニティにもっとも大きくのしかかり、長期にわたり食糧状況を不安定なものにさせます。世界中で食糧不足に苦しむ人の8割以上が、自然災害が発生しやすい環境に暮しています。その多くは、農業で生計を立てていますがわずかな資産基盤しか持っておらず、価格の変動、人口増、土壌や生態系の悪化、気候変動などの影響でさらに打撃を受けます。

災害が起きると

災害が起きると、人々は家や農業に必要な道具・作物を失ったり、避難を余儀なくされたりし、貧困へおいやられます。貧しい弱者は、災害の打撃を受けると、生きていくために、長期的にはマイナスの対処法(子どもを退学させる、農機具を売るなど)をとらざるを得ないこともままあります。
災害がたちまち食糧危機、栄養危機へと発展することもあり、その状態を脱するまで数年かかることもあります。そうなると飢餓と貧困の負の連鎖に陥ってしまい、持続的な発展や繁栄は望めません。

災害と栄養事情

自然災害は、短期的にも長期的にも、人々の栄養状態に大きな影響を及ぼします。
以下はその例です。

  • 開発途上国における身長のばらつきは、その20%以上が、環境要因(特に干ばつ)によるものです。干ばつが起きると、人々が口にする食品の品目が大幅に減り、また食べ物の総消費量も減少します。
  • ザンビアでは、干ばつ時に生まれた子どもたちは、そうでない時に生まれた子どもたちと比べて、身長および体重が平均を下回る確率が最大12%高くなっています。
  • ニジェールでは、生まれた場所に関係なく、干ばつ時に生まれた子どもたちが1歳から2歳の間に栄養不良になる確率は、そうでない場合とくらべて2倍以上です。
  • バングラデシュでの調査によると、洪水後に未就学児の間で衰弱や発育阻害(年齢の割に背が低いということ。慢性的栄養不良の代表的な症状)の割合が増えることが分かっています。これは食糧が手に入りづらくなること、適切なケアの提供が難しくなること、そして汚染物質にさらされる確率が高くなることが原因です。
  • フィリピンでは過去20年間に、台風の襲来時に亡くなった子どもの数よりも、台風発生後24カ月以内に亡くなった子どもの数の方が15倍多く なっています。また、そのほとんどが女児でした。